外資戦コン最速昇格の秘訣と採用の裏側

徹底したケース対策で外資コンサルに入社。その後も爆速で昇格を繰り返した筆者が就活やその後の成功について語ります。

マッキンゼーを落ちた私が泣きながらボスコンに受かった話(その5)

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ベイン一次面接で渾身の出来

面接会場に到着。待合室から見える夕日を見ながら心を落ち着かせる。

名前を呼ばれ、一次面接が始まった。(*ちなみに現在ベインは一次〜三次面接までを1日で行い、その後短期インターンで採用が決まるらしい。当時は少しプロセスが違った。) 

 

お題は「日本のシャンプーの市場規模を求めてください。」

 

ケース対策で相当地力がついた自分は、1分の持ち時間のあとで冷静に解答してく。

  1. シャンプーの市場規模はボトル消費量 × 一本あたりの値段で求められます。
  2. ボトル消費量は以下に定義します。

    ボトル消費量(本) = (人口 × 1年間のシャンプーの回数 × シャンプーの時のプッシュ数 × ワンプッシュの量)÷ ボトルあたり容量

  3. 順に求めていきます。

    人口は女性6000万人、男性6000万
    1日あたりのシャンプーの回数は「夜だけ」と「朝と夜」の比率を5:1程度(自分の友人を参考に)と考え、(1 × 5 + 2 × 1) ÷ 6で1.1666666。ざっくり1.2回
    シャンプーのプッシュ数は男性1回、女性3回とします(自分の家族や友人を参考に)
    ワンプッシュの量は5ml
    ボトルの容量は500mlとします。

  4. 上記仮定より、
    (6000万人 × 1.2回/日 × 365日 × 1プッシュ × 5ml + 6000万人 × 1.2回/日 × 365日 × 3プッシュ × 5ml)÷ 500ml ≒ 10億本

    これに当時自分が買っていたTSUBAKIだと一本500円くらいなので、
    市場規模は約5,000億円と考えられます。

 

という流れを紙に書きながらノンストップで回答。開始して10分程度しかたっていなかったと思う。

 

もちろん、多少粗い回答なのは分かっていた。男性、女性で6000万人づつと言っても、乳幼児や超高齢の方は毎日シャンプーを使わない可能性もあるし、ワンプッシュの量やボトルの量も感覚でしかない。ただこの構造式と計算をスーパースピードで見せることに意味があると思った。

実際のシャンプーの市場規模は4000億円程度だと思われるので少し大きく出てはいるが、十分許容範囲だと思う。

以下富士経済のヘアケア市場レポート↓

http://www.group.fuji-keizai.co.jp/press/pdf/170713_17063.pdf

 

戦略コンサルの採用担当の目線でこの回答を振り返った時に、良かったと思うポイントは三つ

  1. 計算の中でしっかりと「女性」「男性」というセグメントを意識していること。

    →シャンプーという商品において、性別は消費量、ニーズともに大きく異なる。その後の打ち手にも関係する部分なので、セグメントを分けていることが好印象。当時これが出来たのは、数多くのフェルミ推定を考えることで、有効なセグメンテーションを設定する意識が磨かれていたからだと思われる。

  2. 計算をリアルタイムでさくさくと行ったことで、「計算力」をアピールできたこと。

    →この時から自分の中で「型」になったのがこの方式。世帯数や建物の数など、計数を暗記していることと、何度もフェルミ推定を考えることで、桁の感覚を持つことができ、スラスラと暗算していける。

  3. 細かすぎず、粗過ぎない分解。

    →「ケース面接」と「自分一人で解くフェルミ推定」の最大の違いは何か?それは、制限時間。ゆるすぎる分解は思考の浅さを露呈してしまうが、一方で分解を細かくしすぎると、その計算に追われていつまでたっても答えが出てこない。今回の場合でも、「一日のシャンプーの数」「一回のプッシュ数」などはある程度分けているが、人のセグメントは「女性」「男性」程度しか分けていない。年齢でこれを分けるとさらに細かい計算になっていただろう。こういう場合は一度一通りの計算をした後で「より詳細に分析するなら〇〇の仮定を深掘りします。」と言うのが好印象。

 

面接官からも「すばらしい。」と一言。かなりの手応えを感じる。

 

二次面接続行

単なるフェルミ推定としてはこれで十分と考えたのだろう、次の質問が飛んでくる。

では、「あなたが化粧品メーカーなら、どうやってシャンプーの売上を伸ばしますか?」

議論しながらやっていきましょう。と言われる

 

面接官:どう考えますか?

アセルス:まず、女性市場と男性市場は別物と考えます。女性はシャンプーに対して大きく拘りがあり、一つのブランドにある程度拘る傾向がある。ブランドの切り替えは大変で、多くの競合が存在。一方男性用シャンプー市場については目立ったブランドはありません。(*当時は目立った男性向けシャンプーは販売されておらず。)

面接官:なるほど。

アセルス:ですので、女性向けのシャンプーを開発、プロモーションしても大きなシェアアップや売上アップは難しいと考えます。そこで男性向けのシャンプーにフォーカスしたいと思います。

面接官:アセルスさんもおっしゃるように、もし男性がシャンプーに拘りがないとすると、一度は買ってくれたとしても、安いブランドに流れてしまうように思いますが。

アセルス:はい。ですので、男性にとって最も関心の強いニーズを捉えるシャンプーを開発します。

面接官:それは何でしょうか? 

アセルス:抜け毛対策用のシャンプーです。例えばある程度抜け毛が進んでいる男性が、このシャンプーを使い続けることで抜け毛を防止し、毛の成長を促進するようなシャンプーを開発します。リアップのシャンプー版のような商品です。それが可能な開発チームがいれば、ですが。

面接官:なるほど。それは面白いですね。一旦開発可能かどうかの議論は置いておいて、開発できたとしましょう。ただ、男性シャンプーの市場規模は女性の三分の一と小さいですが、インパクトはありますか? 

アセルス:このシャンプーは使えば使うほど効果があるシャンプーとします。つまり夜と朝など12時間に一回使った方が効果が高いシャンプーとします。これによって男性のプッシュ数が女性より少なくても、シャンプーの回数を増やすことで消費量を増やすこともできます。

面接官:最後に質問です。競合が同じ戦略をとってきた時はどうしますか?

アセルス:まずは抜け毛効果で他社に勝たなくてはいけないと思います。その上で、最初に販売することでブランド力を早急に作ることが重要だと思います。

 

かなり良いできだったと思う。ブーズの面接で生産性のない突っ込みをしていた頃と比べると、自分でも驚くほどの変化だった。

 

この回答の良かったポイントは

  1. ターゲットをしっかりと絞っていること、また絞っているロジックがある程度あること

    →ターゲットを絞ることはできるが、思いつきの場合も多い。「市場の魅力度」「競争環境」「自社優位性」などが理由になり得るが、この中で「競争環境」を背景に説明している部分に納得感がある。現在は男性向けにもある程度シャンプーブランドが出てきているが、就活していた頃は、ほぼ皆無だった。

  2. セグメントニーズをしっかりと捉えていること

    →「抜け毛が治るシャンプー」反則技のような商品ではあるが、男性にとっての抜け毛問題が非常に大きなニーズであることは事実なので、そこにフォーカスしていることは良い

  3. 「シャンプーの回数を増やす」という発想がアウト・オブ・フレームであり、面白い

    →単なるシェア奪取だけでなく、市場のパイ自体を広げようとする発想が打ち手に含まれていることが良い。またそれを広げる方法として、「二回やれば効果が上がる」という理由づけもちょっと無理はあるがある程度受け入れられる。これも抜け毛予防というニーズに対する商品だからこそ可能な戦略であり、結果としてセグメントの選択が一石二鳥の役割を果たしている。 

 

余談だが、この頃は「抜け毛防止のためのシャンプー」という発想は『そんなもんあったら苦労しねーよ』というレベルのアイディアであり、当時の自分も(まあそんなん開発できないだろうけど…)くらいに思いながら発言していた。

その後、自分が戦略コンサルで働き始めたあとで、自分のケースの話は的中する。

 

そう、スカルプDが大々的なコマーシャルと共に発売され、バカ売れした。

 

もちろんスカルプDは当時の自分が想像していたR&Dドリブンな商品というよりは、ブランディングドリブンな商品だし、1日に複数回使用することを推奨したりはしないが、概ねターゲットセグメントやコンセプトは考えていた通りであった。

 

面接官の反応も、最後の方はにやけていた。

採用面接をやったことがある人なら分かるかもしれないが、「気持ちいいくらいいい回答」をされた時は思わず笑ってしまうことがある。その状態だったように思う。

 

最後に十分程度雑談をして、『またお会いできるのを楽しみにしてます。』と言ってもらえた。

会場を出たあと思わずガッツポーズ。自分を褒めてやりたくなった。

 

後日合格通知が届き、二次面接へ向かうことになる。

 

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