前回のストーリー
まさかの仲間割れ?!
二日目の中間発表にかなりの手応えを感じた自分は、朝から意気揚々である。ジョナサンのシャケ定食もいつもより美味しく感じられる。
爽やかな気分で気分で作業ルームで分析を開始。今日から二日で具体的な打ち手を考え、きちっとしたプレゼン内容に落とし込まないといけない。
10時頃になって高橋さんが登場。なんだか顔色が悪い気が、、、気のせいかな?
二人で打ち手について話しを始めると、高橋さんがポツリと一言。
てか、なんで富裕層セグメントに注力するですっけ?
は??
いやいや、中間発表までに散々話したじゃん。というイラつきを押さえながら、説明。
アセルス:それは、セグメントとしての売上が全体の30%程度もあると思われるし、この部分は顧客単価も高くて、今成長してるセグメントだから
高橋さん:でも、売上30%って、アセルスさんが電話で聞いて来た情報をベースにした計算ですよね?正しいんですか?
アセルス:統計データとかではないから必ずしも正しくはないけど、実際にその場に行った人の購入金額とか体験をベースにしてるから、そこまで間違ってると言えないけど。てか、それ疑い始めたら、僕ら戦略なくない?
高橋さん:いや、高齢者が成長するっていう戦略はできると思うけど。
アセルス:うーんでもそれ、誰でも考えらる…じゃなくて、それだけだと弱くない?
高橋さん:まあそうですよね、、、でも富裕層フォーカスってなんかしっくりこないんですよね〜。
結構省略して書いたが、こういう議論を1-2時間くらいはやってた。他のメンバーから後から聞いた話だと、喧嘩してると思うくらい激しく言い合ってたらしい。
アセルス:分かった。とりあえずこのままだと時間がもったいないから、俺が富裕層セグメントのストーリーを作って、高橋さんが高齢者向けのストーリーを作れば良くない?
高橋さん:う〜ん、、、まあそうですね…
アセルス:(どないやねん!時間ねーんだよ!笑)とりあえずそうしよう!
というわけで富裕層を攻めるというストーリーはなんとか守った。
実際のコンサル実務でもこういうことは起きる。そういう場合はだいたいマネージャーや上のクラスの人間が行司役をやってくれて、どっちが正しいかジャッジしてくれるが、インターンではみんなが並列なので、決着をつけることがとても難しい。チームメイトを怒らせずに、自分の意見もある程度通す技術が要求される。
塚地さん登場
なんとか高橋さんに高齢者セグメントを押し付け担当してもらい、自分は打ち手を考えていく。この時思っていた打ち手は以下。
- 富裕層プラチナカードを作って、クレジットカード会社と提携
- 他の百貨店などの富裕層イベントに参加し、そこで勧誘する
- 一定以上の購入履歴のあるお客様を富裕層イベントに招待して、もっと買ってもらう
- 東京ガールズコレクションなどのイベントを開催し、そこに行けるという特典もつけて、勧誘する
まあまあかな?と思っているとこに全く知らないメンターでもないBCGの社員の方が登場。自分に議論を吹っかけてくる。ドランクドラゴンの塚地のような見た目。
塚地さん:富裕層セグメントは分かったけど、どうやって獲得するの?
アセルス:他の百貨店の富裕層から奪ったり…TGCなどを開催して特別感を…
塚地さん:そんなかで一番面白いのは?
アセルス:TGCの開催ですかね。(ちょっと面白味のある施策の方がウケるかな?)
塚地さん:そう。(「ダメだなこいつ。」)
アセルス:塚地さんならこの施策で富裕層が集まると思いますか?
塚地さん:俺は無理だと思うよ。
アセルス:じゃあどういうのならいいですか?
塚地さん:それは自分で考えなよ。
塚地さんはイライラした顔で去って行った。
再び地獄である。。。このままではヤバイ!
なんとなく打ち手は面白いことを言っとけば良いと思っていたが、それは大きな間違いだと気づく。
「もっと本気で経営者に話せるようなレベルじゃないとダメだ…」
富裕層をいくつかの段階に分けることにする。
① 今まで富裕層ではなく、新しく富裕層になった人
② すでに富裕層だが、アパレルブランドの特別会員カードなどを持っていない人
③ 富裕層で、他社のアパレルブランドの特別会員カードなどを持っている人
①については、「富裕層になったら人は何をするか?」という観点で考えた。
世の中のお金持ちをイメージすると出て来るのは「自動車」と「マイホーム」。これだ!自動車ディーラーや戸建販売会社と提携し、その場でプラチナカードに招待すればいい!
②については、自社ブランドの購入金額を調べ、多く購入している人へアプローチすればいい。その際、新規加入で海外旅行や、国内の高級トラベルのプレゼントを行う。
③については、他ブランドの富裕層イベントにいくのではなく、他ブランドの富裕層顧客向けの営業マンをスカウトしてくればいい!
この3つの案を考え、塚地さんのデスクを調べて突撃した。自分が考えたフレームワークと打ち手をマシンガンのように語る。
アセルス:③については、富裕層顧客が営業マンとコネクションが強いことから、営業マン自体をスカウトし、富裕層顧客を引っ張ってこようと思います!
塚地さん:…ふーん。まあいいんじゃない?
アセルス:どう思いますか?
塚地さん:まあさっきよりは良くなったかな。きみ能力は置いといて、ガッツはあるね。
お礼を言って退室する自分。やはり悪印象のまま終わりたいくないので、わざわざデスクまで詰め掛けた意味はあったかもしれない。
気づけばもう夜遅くになってしまっていた。プレゼンは明日の午後なのに、資料は何もできていない。高橋さんの部分もきになるが、それは明日。まずは自分のセクションを今日中に仕上げないと。
仕事か友情か
このBCGのインターンには忘れられないエピソードがあるので紹介しておく。
塚地さんと話してから、部屋に戻ってパワポの構成を考えていると不意に電話が鳴った。親友の田中からの電話だ。
アセルス:もしもし
田中:おう、悪い今大丈夫?
アセルス:あ、今インターンの最中でさ…
田中:そっか、悪かった。じゃあええわ。
明らかに様子がおかしい。なんかあったんじゃないか?でも今パワポを仕上げないと、明日のプレゼンがヤバイ!
その時ふともう一人の自分が話しかける。
今田中と話さないなら、お前は仕事始めたらもう友達誰とも話さなくなるんじゃね?それでいいの?
アセルス:いや、大丈夫だから話聞くよ。どした?
田中:いいん?
アセルス:おうもちろん。
田中:サンキュー。実は今日彼女と別れてさ、、、
話を聞くと、その夜に彼女から別れを切り出されたらしかった。田中はいつもとても嬉しそうにその彼女のことを語るのを知っていたので、こちらも苦しくなった。そして本当に電話を切らなくて良かったと思った。
休憩室から見える赤坂見附の夜景を眺めながら、田中と2時間くらい話をした。
電話を切った時には、12時を過ぎていた。「今日は徹夜だな。」
今でも田中は大親友の一人だ。
最終プレゼン
富裕層のパートは徹夜で仕上げたので、ある程度ストーリーは固まっていた。プレゼンの構成は
- 富裕層マーケットが収益的にも大きく、また成長している点
- 富裕層セグメントをさらに3つに分類
- それぞれの分類についての打ち手説明スライド
高橋さんの進捗は良く分かっていなかったが、ある程度高齢者向けのパワポを作っていた模様。
全体を統合し、それぞれの自分のパートをプレゼンすることにする。
四日間の総仕上げのプレゼンが始まる。
中間発表よりも多い、30人規模の社員の方が見守る。塚地さんもいた。
無事プレゼンは終わり、自分のパートの打ち手を話すときは、「なるほど」みたいな声もチラホラ聞こえた。かなり良いと思ってくれたようだ。
その後打ち上げの飲み会があり、無事全プログラムは終了。
仲良くなったメンバーとも別れを告げ、家路に着いた。
その後
後日ボスコンから合格を知らせる電話が鳴る。
人事:アセルスさん
アセルス:はい
人事:アセルスさんには是非、弊社にご参画いただきたいと思っております。
アセルス:ありがとうございます!
人事:一方で、アセルスさんはベインからも内定が出ているとお聞きしております。
アセルス:はい
人事:ですので、弊社のことをより理解して頂きたく、〇〇とのディナーをセッティングさせて頂きました。
ここから怒涛のディナーセッションが始まる。ベインとボスコンの内定を貰った自分はありがたいことに、両者のパートナーや若手とのディナーセッションを次々と設定され、「是非ウチに欲しい」と勧誘をいただりもした。
マッキンゼーを筆記落ちして、その後も軒並み不合格だった自分がこんな待遇を受けていることが不思議であり、まさに大逆転といった感じだった。
マッキンゼーを落ちたあの日に泣きながら誓って、努力したことは、無駄ではなかった。報われたと思えた日々だった。
その後憧れの外資コンサルに入社し、7年以上も日本だけでなく世界中でプロジェクトをこなし、圧倒的な成長と華やかな世界を経験することができている。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
雑多な文章にも関わらず、最後まで読んで頂きありがとうございました。
自分がこのブログを通じて伝えたかったキーメッセージを書かせて頂きます。
「努力し続ける」ことの重要性。
マッキンゼーを落ちた状態で、なんの準備もせずにボスコン、ベインを受けてもきっと不合格だったと思います。自分なりに現状を分析し、やるべきことを計画し、訓練を続けたことがベイン、ボスコンの合格に繋がったように思います。
「諦めない」ということ。
いくつかのコンサルで不合格だったとしても、次で受かるかもしれない。「自分には無理だ」なんて思う必要はありません。未熟だった部分は変えることができます。
自分を信じること。
就職活動や転職活動で不合格を食らった時には、時として自分自身を否定されたように感じることも少なくありません。自分がマッキンゼーを落ちたときやその他のコンサルファームを落ちたときもそんな気分でした。でも、それはあくまでその会社のその瞬間の判断であって、絶対的なものではありません。「自分自身の価値は自分で決める」くらいの気持ちでやりきって、それでもダメなら「アイツら人を見る目ないな」くらいに思ってやりましょう。人生は長いです。
最後になりましたが、今後もコンサルに関する役に立つ内容をちょこちょこ上げていければと思いますので、お楽しみに!また読みに来てもらえればと思います。
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ケース面接支援も趣味でやってます。